一次調整力は、周波数が崩れた瞬間に、蓄電池などが10秒以内で自動的に反応し、需給の急変を最初に受け止める調整力です。一般送配電事業者が需給調整市場で調達し、標準的な商品要件は応動10秒以内、継続5分以上。市場参加には、カタログ上の性能だけでなく、リソース区分に合う書類審査と実働試験、計測・通信、SOC管理が必要です。2026年9月10日、EPRXの現行取引ガイドと一次調整力用の事前審査様式を再確認し、発注前の確認事項を追記しました。
設備側で変化を捉える
放電を増やす/充電を減らす
約定コマ中は供出能力を維持
出力余力と使用可能容量を残す
PCSの定格だけでは判断できません。周波数検出、制御、計測、連系点までを一つの系として確認します。
一次調整力は、周波数の崩れを最初に受け止める
電力系統では、需要と供給がずれると周波数が変化します。大きな発電所が停止したり、秒単位の需要変動が重なったりした直後は、中央から細かな指令を出すより速く設備が反応しなければなりません。一次調整力は、こうした極短周期の変動や電源脱落に対応する最も速い市場商品です。
一次調整力は、設備側で周波数を検出して自律的に出力を変える自端制御が基本です。火力や水力ではガバナフリー制御、蓄電池ではPCS・制御装置が周波数変動を捉えて充放電出力を変えます。一般送配電事業者が買うのは電池そのものではなく、必要なときにこの動きをできる能力です。
標準要件は10秒以内・5分以上、30分商品で取引
EPRXが2026年3月13日に更新した商品説明では、一次調整力の応動時間は10秒以内、継続時間は5分以上です。2026年度から一次調整力~三次調整力①は前日取引となり、商品ブロックも30分へ変更されました。設備が5分間だけ待機すればよいという意味ではなく、約定した30分コマで必要な能力を提供できる状態を維持します。
OCCTOの2026年度向け整理では、一次調整力の最低入札量は1MW、入札量は1kW単位です。単体で1MWに届かないリソースは、認められた方法でアグリゲートする選択肢があります。監視をオフラインで行う一次オフライン枠には応動時間30秒以内など別の条件があるため、標準商品と同じ要件として扱わず、最新の取引ガイドと属地TSOの事前審査資料を確認します。
蓄電池は、周波数低下時に放電または充電を減らす
需給調整市場で現在取引されるのは上げ調整力です。系統で電気が不足し周波数が低下する方向では、蓄電池は放電出力を増やすか、充電中であれば充電電力を減らして、系統から見た供給力を上げます。変化を設備側で検知してから、10秒以内に必要な出力へ到達できる制御性能が要点です。
応動のためには、満充電でも空でもない適切なSOCを保ち、放電できる出力と電力量を予約しておきます。PCSの定格だけでなく、蓄電池の使用可能容量、応答遅れ、計測周期、通信遅延、補機消費、温度制約、劣化、連系点での出力上限が実際の供出量を左右します。カタログに『高速応答』と書かれているだけでは市場参加要件を満たしたことにはなりません。
単独・発電機リスト・需要家リスト等
制御・計測・通信の構成を整理
測定点、時刻同期、伝送遅延を確認
SOC、実績、未達時の負担を管理
書類審査と実働試験の様式は別です。設備保有者、運用事業者、EPC、PCS・EMSベンダーの担当を先に分けます。
収益は、待機するΔkWと実際に動いたkWhを分ける
一次調整力の中心となる収入は、約定した調整力を出せる状態で確保するΔkWの料金です。実際に調整した電力量はkWhとして別に精算されます。したがって、ΔkW単価だけで年間売上を計算せず、約定量・約定率、実際の応動、充電電力費、変換損失、劣化、アグリゲーター費用、アセスメントを分けて収支へ入れます。
2026年8月28日時点では、一次調整力のΔkW上限価格は15.00円/ΔkW・30分で、2026年9月1日の実需給分から10.00円へ変更されます。これは応札・約定価格の上限であり、10円で必ず約定する制度でも、売上を保証する価格でもありません。上限を超えて約定した場合も、精算では上限価格が適用されます。
一次は自端制御、二次・三次は役割と指令が違う
一次調整力は、極短周期の変動に対して設備が自端制御で反応するのが特徴です。二次調整力①は短周期変動や電源脱落へ5分以内で対応し、二次調整力②は長周期の予測誤差へ5分以内で対応します。三次調整力①は15分以内、三次調整力②は60分以内で、より長い時間軸の予測誤差などを受け持ちます。
速い商品ほど常に単価が高く、蓄電池に有利とは限りません。一次へ出すための出力を確保すると、同じ時間にJEPXの価格差取引や別の商品へ自由に使える範囲が減ります。複合入札を含め、どの商品へどれだけ配分するかは、約定見込みとSOC、劣化、通信・運用費を同じ30分単位で比較して決めます。
事前審査は、書類審査と実働試験を分けて準備する
EPRXの現行様式集では、一次調整力の事前審査に、応動確認用フォーマット(書類審査用)と応動実績提出用フォーマット(実働試験用)がそれぞれ用意されています。単独発電機、発電機リスト・パターン、需要家リスト・パターン、ネガポジリスト・パターンで様式が分かれるため、設備完成後に運用会社へ一任するのではなく、計画段階でどのリソース区分・審査単位を使うかを決めます。
一次調整力と二次調整力①に共通する上り伝送遅延時間の情報様式もあります。応動性能はPCS単体の立ち上がり時間だけでは決まりません。周波数検出、EMS・制御装置、計測、データ伝送を通って、審査で扱う測定点の出力へ反映されるまでを一つの系として確認します。試験時に必要なデータ周期、時刻同期、保存期間、提出形式は、属地TSOと運用事業者の要件に合わせます。
- ✓リソース区分と審査単位
- ✓書類審査用の応動確認データ
- ✓実働試験の実績データ
- ✓周波数検出から測定点までの応答
- ✓上り伝送遅延と時刻同期
- ✓SOC上下限・基準値・連系点出力
設備発注前に、事前審査と責任分界を確認する
市場へ参加するには、取引会員資格だけでなく、属地TSOによる事前審査で応動性能や計測・通信などを確認します。EPRXは単独発電機、発電機リスト・パターン、需要家リスト・パターン、ネガポジリスト・パターンごとの一次調整力用フォーマットを公開しています。蓄電池の接続形態によって、発電リソースかDRか、どの単位で審査するかも変わります。
案件の初期段階では、EPRXの現行取引規程・取引ガイド、蓄電池参入ガイド、一次調整力の事前審査様式、属地TSOの通信・計量要件を一式で確認します。設備保有者、アグリゲーター、BG、EPC、PCS・EMSベンダーの間で、入札、SOC管理、指令対応、実績提出、アセスメント不適合時の負担を誰が持つかまで契約に落とすことが重要です。
- ✓標準商品か一次オフライン枠か
- ✓10秒以内の応動と5分以上の継続をどこで測るか
- ✓最低入札量1MWとアグリゲーション方法
- ✓連系点出力、PCS出力、使用可能容量の違い
- ✓SOC、効率、劣化、補機電力の運用前提
- ✓計測・専用線・監視・データ保存の仕様
- ✓ΔkWと調整電力量の精算方法
- ✓アセスメント不適合時の契約上の負担
POINT
この記事のまとめ
一次調整力は、極短周期の需給変動や電源脱落に対し、設備が自端制御で10秒以内に応動し、標準商品では5分以上継続する調整力です。蓄電池は放電または充電抑制で上げ方向へ応動しますが、SOC、PCS・EMS、計測・通信、事前審査、アセスメントまで満たす必要があります。収益はΔkWの待機価値と実際に動いたkWhを分け、2026年9月1日からの上限10円を約定保証と誤認せずに試算してください。
系統用蓄電池の設備・工事について相談する
接続検討回答や候補地の条件、希望する出力・容量を確認し、蓄電池・PCS・受変電設備と工事範囲を整理します。
- ✓接続条件と連系点の確認
- ✓蓄電池容量とPCS出力の整理
- ✓受変電・基礎・配線・試験の工事範囲を確認
参考にした一次情報
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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