需給調整市場とは?JEPXとの違いを蓄電池の動きから解説

需給調整市場とJEPXの違いを、誰が何を買う市場か、蓄電池がどう動くか、一次・二次・三次調整力の応動時間、ΔkWとkWhの収益構造から解説します。

需給調整市場は、送配電会社が『必要なときに出力を動かせる能力』を買う市場です。JEPXが主に電気そのものを円/kWhで売買するのに対し、需給調整市場では、指令に応じて発電・放電・需要抑制できる状態を確保し、その能力をΔkWとして取引します。蓄電池は要件を満たせば参加できますが、設置しただけで収入が得られる仕組みではありません。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。

MARKET DIFFERENCEJEPXと需給調整市場は、買うものが違う
JEPX電気そのもの

翌日・当日に受け渡す電力量を円/kWhで売買

買い手・売り手電気事業者など

発電・小売などの取引会員が電気を売買

需給調整市場動かせる能力

必要時に出力を変えられる状態をΔkWで確保

買い手一般送配電事業者

周波数維持と需給バランス調整のために調達

JEPXの時間前市場と需給調整市場も別物です。時間前市場は電気の売買、需給調整市場は実需給で動かせる能力の調達が中心です。

01

JEPXは電気、需給調整市場は動かせる能力を取引する

JEPXのスポット市場は、翌日に受け渡す電気を30分単位の48商品として売買する市場です。約定価格の単位は円/kWhで、売る電力量・買う電力量そのものが取引の中心です。時間前市場は、スポット市場の後に生じた発電不調や需要増加などへ対応するため、当日の受け渡しまで電気を売買します。

需給調整市場で一般送配電事業者が調達するのは、実需給の直前から瞬時に生じる需要と供給のずれへ対応できる調整力です。一定量を発電・放電できる状態、または需要を抑えられる状態をあらかじめ確保し、必要になれば指令や周波数変動に応じて動かします。市場名は似ていますが、買い手、取引する価値、設備に求める動きが違います。

02

なぜ30分計画だけでは足りないのか

発電事業者や小売電気事業者は、計画値同時同量制度の下で30分単位の計画と実績を合わせます。しかし実際の需要と発電量は秒単位で変わり、需要予測の誤差、再エネ出力の予測誤差、電源の停止なども発生します。30分の計画が合っていても、その途中で需要と供給がずれれば周波数へ影響します。

一般送配電事業者は、この短い時間のずれまで含めて需要と供給を一致させます。そのために、反応速度や継続時間の異なる一次・二次・三次調整力を組み合わせます。需給調整市場は2021年4月に創設され、2024年度から全ての商品区分で市場取引が始まりました。対象は沖縄電力の供給区域を除きます。

03

一次・二次・三次は、速さと役割が違う

調整力は、速いものほど常に高収益という単純な順番ではありません。応動方法、計測、通信、指令追従、継続時間、事前審査、アセスメントが商品ごとに異なり、設備が満たせる要件と市場の約定状況で結果が変わります。

2026年8月時点のEPRX資料では、一次調整力は10秒以内に応動し5分以上継続、二次調整力①・②は5分以内に応動し30分継続、三次調整力①は15分以内、三次調整力②は60分以内に応動し、いずれも30分継続です。詳細な制御方法や評価方法は、商品別の記事と最新の取引ガイドで確認します。

RESPONSE LADDER調整力5商品の応動時間と継続時間2026年8月28日時点
商品主な対象応動継続
一次極短周期変動・電源脱落10秒以内5分以上
二次①短周期変動・電源脱落5分以内30分
二次②予測誤差の長周期成分5分以内30分
三次①GC後の予測誤差・電源脱落15分以内30分
三次②FIT特例の再エネ予測誤差60分以内30分

応動時間だけで参加可否は決まりません。制御、計測、通信、事前審査、アセスメントなどの商品別要件を最新の取引ガイドで確認します。

04

蓄電池は、放電できる余力とSOCを確保する

需給調整市場で取引されるのは当面、上げ調整力です。電気が不足したときに、蓄電池なら放電して系統へ供給する、または充電中の電力を減らすことで上げ方向へ応動します。需要家側の設備であれば、電力使用を抑えるDRとして参加する形もあります。

蓄電池は、約定した時間に必要な出力を出せるSOCを確保し、指令や周波数変動へ追従できる状態を維持します。その間は、同じ出力・容量をJEPXの価格差取引へ自由に使えるとは限りません。充電電力、変換損失、補機電力、電池劣化、通信・監視、アグリゲーター費用まで含めて運用可能量と手取りを確認します。

05

収益はΔkWと調整したkWhを分けて読む

ΔkWは、実需給時点に出力を調整できる状態で確保した能力です。一般送配電事業者から実際の指令が出なかった時間でも、約定した能力を提供できる状態にしておく必要があります。これに対しkWhは、指令などに応じて実際に調整した電力量です。

事業計画では、ΔkWの約定単価と約定量だけで年間売上を作らず、応札可能率、約定率、実際の指令、調整電力量料金、SOC制約、アセスメント、停止時間を分けます。JEPXの充放電収益を加える場合も、同じ時間・同じ出力の二重計上がない運用表が必要です。市場の上限価格や精算条件は改定されるため、案件取得時の資料だけで固定しません。

06

2026年度から前日取引・30分ブロックへ移行

2026年度向けの制度・システム変更では、一次調整力から三次調整力①までが前日取引となり、取引時間単位も30分ブロックになりました。三次調整力②を含め、各商品の計画提出を前日断面で扱う仕組みに整理されています。2026年7月1日実施の取引規程と第10版取引ガイドが、2026年8月28日時点の現行資料です。

前日化によって、事業者は需要・再エネ予測や蓄電池のSOCを実需給に近い時点で見直せます。ただし、約定後に必要な性能を維持する責任が軽くなるわけではありません。入札、基準値・機器点計画、指令、実績、アセスメントまで一連の業務を、運用会社・アグリゲーター・設備保有者の誰が担うかを決めます。

07

案件で最初に確認する資料と条件

市場参加の可否は、蓄電池のカタログだけでは決まりません。取引会員資格、属地TSOとの事前審査、最低入札量、通信方式、計量点、基準値、指令追従、アセスメント、契約関係を確認します。低圧リソースも2026年3月14日実需給分から、要件を満たせばアグリゲートして参加できるようになりました。

設備発注前に、狙う商品と運用市場を決め、PCS・EMS・監視・計量・通信・受変電設備が要件へ適合するかを運用者と照合します。EPRXの取引規程・取引ガイド、商品要件、契約体系、属地TSOの事前審査資料を最新版で確認し、制度変更時に収支を更新できる計算表を残しておくことが実務の出発点です。

  • 狙う商品と応動・継続時間
  • 取引会員・アグリゲーター・BGの役割
  • 属地TSOの事前審査と計測点
  • PCS・EMS・通信・監視の仕様
  • SOC、効率、劣化、補機電力の前提
  • ΔkW・kWh・JEPX収益の重複確認
  • アセスメント不適合時の契約上の負担
  • 取引規程改定時の再試算方法

POINT

この記事のまとめ

JEPXは主に電気そのものを円/kWhで売買し、需給調整市場は一般送配電事業者が出力を動かせる能力をΔkWとして調達します。蓄電池はSOCを確保して商品ごとの速さ・継続時間・指令追従要件を満たし、実際に調整したkWhは別に精算されます。投資判断では、JEPXと需給調整市場の売上を同じ時間に重ねず、設備・通信・審査・アセスメント・費用まで含めて確認してください。

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本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。

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