経済産業省と電力広域的運営推進機関は2026年9月14日、同時市場の第1フェーズで予定していた技術研究について、本年度末までに一定の結果を示すことを前提としたシミュレーションは実施しない方針を示しました。短期間の試行では本番システムの実現性を十分に検証できないとの判断です。これは同時市場の導入中止や延期を決めた発表ではありません。蓄電池の収益計画で何を確定情報として扱い、何を仮定のまま残すべきかを整理します。最終確認日:2026年9月14日。
見送るのは、2026年度末を期限としたシミュレーション
当初は、最適化計算エンジンを使ったシミュレーションを行い、2027年2月に結果を示す想定でした。しかし、委託手続きと検証環境の整備に時間がかかり、2026年8月時点で実際に試せる期間は1か月程度になる見込みでした。資料では、個別の制約を再現する試行と、本番に近い市場システムの実現性確認は性質が異なると説明しています。
事務局は、年度内の完了を条件とする試行では有効な検証が難しいとして、今回の期限を前提としたシミュレーションを実施しない方針を提示しました。限られた期間で形だけの結果を出すより、制約条件を組み合わせた検証方法を詰め直す判断です。
同時市場そのものの中止ではない
資料は、年度内での実施と評価完了を条件にしないシミュレーションについて、内容の検討と準備を続けるとしています。実施するかどうか、いつ実施するかは改めて検討する方針です。並行して、海外市場システムの調査、海外システムに関わった技術者へのヒアリング、事業者への調査、詳細業務設計も継続します。
したがって、今回の発表だけから同時市場の開始時期が延期された、あるいは現行のJEPXや需給調整市場がそのまま続くと断定することはできません。一方、約定処理の実現性を実機に近い形で確認する時期は未定になったため、投資計画では制度の確度を一段低く見ておく必要があります。
蓄電池はSOCと入札方法が設計の中心になる
検討資料では、日本の市場を模擬する案として揚水と蓄電池を約150機取り込み、充放電効率、蓄電量の上下限、開始時と終了時の蓄電量を考慮する考え方が示されています。運用方法についても、市場システムが最適化する場合と、事業者側が入札する場合の両方が検討対象です。
ただし、これらは確定した入札要件ではありません。小規模な蓄電池を最適化計算の対象外とし、セルフスケジュールで扱う海外例も論点に挙がっています。どの規模や用途がシステム最適化の対象になるか、SOCの責任を誰が負うか、どの情報をいつ登録するかは、今後の設計で変わり得ます。
収支計画は現行制度と将来制度を分けて作る
系統用蓄電池の事業収支を作るときは、現行のJEPX、需給調整市場、容量市場に基づくケースと、同時市場導入後の仮定を混ぜないことが重要です。同時市場の約定方法、価格算定、差分精算、アップリフト、計画提出が固まる前に、特定の収益配分を確定値として資金調達資料へ入れるのは避けます。
設備仕様も市場ルールだけで決めず、連系条件、PCS出力、使用可能容量、劣化保証、温度管理、通信、保守を先に確定します。将来制度の変更で運用パターンが変わっても、保証範囲と系統要件を外さない構成にしておくことが重要です。
契約前に残しておきたい調整余地
運用委託や収益分配の契約では、同時市場の制度変更を誰が追い、設定変更や追加試験、通信改修の費用を誰が負担するかを確認します。入札単位、SOC管理、計測点、データ保存、精算方法が変わった場合の協議条項も必要です。長期の収益保証がある場合は、制度変更時の免責範囲だけでなく、再計算方法まで読みます。
機器発注では、EMSの改修可能性、外部システムとの接続仕様、ソフトウェア更新の責任、サイバーセキュリティ要件を確認します。制度の未確定部分を機器価格へ無理に織り込むより、変更時に追加費用と工期を見積もれる契約にしておく方が、投資判断の精度を保ちやすくなります。
次に確認するのは検証方法と詳細業務設計
2026年度の技術研究は、海外の市場システム調査と技術者へのヒアリングを中心に、国内での実現可能性を評価する方向です。事業者アンケートは2026年11月頃まで進める予定で、入札、約定、精算、情報公開の順に論点を詰めます。
次の重要な確認点は、年度をまたいだシミュレーションを実施するか、その対象に蓄電池のSOCや系統制約をどこまで含めるか、詳細業務設計で入札と精算の案がいつ示されるかです。投資判断では会議の開催だけを追わず、確定したルール、検証中の案、未着手の論点を分けて更新します。
POINT
この記事のまとめ
同時市場は中止になったわけではありませんが、2026年度末を期限とした技術シミュレーションは見送る方針です。蓄電池の投資計画では、現行制度の収益と将来制度の仮定を分け、SOC、入札、精算、システム改修に変更余地を残してください。
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