電力需給調整力取引所(EPRX)は2026年8月25日、7月分の需給調整市場の取引結果、連系線確保量、単一札約定量の確報を公表しました。結論から言うと、この確報だけを見て『系統用蓄電池はいま儲かる』とは判断できません。公表値は市場の約定状況を示しますが、個別設備の稼働率、アセスメント、充放電損失、電池劣化、アグリゲーター費用、資金調達費まで含む利益表ではないからです。7月データは事業計画の入力値の一部として使い、同じ設備の実運用と費用へつなげて読む必要があります。
7月確報で分かること、分からないこと
EPRXが公表したのは、2026年7月分の取引結果、連系線確保量の確報値、単一札約定量です。商品・エリア・時間帯ごとの需給や約定状況を確認する材料になります。
一方、公表データから特定の蓄電所の売上、応動実績、未達、SOC、劣化、運用費は分かりません。市場全体の平均単価や約定量を、個別設備が毎回獲得できたと置くのは危険です。なおEPRXは公開データの商用利用に事前契約が必要と明記しているため、本記事では確報の存在と読み方を扱い、データ表の転載・再集計はしていません。
約定単価は売上単価であって、利益率ではない
需給調整市場では、要件を満たす調整力を提供し、商品ごとの取引規程とアセスメントに従います。約定単価が高い時間があっても、応札できなかった時間、約定しなかった容量、指令対応のため確保した残量、未達時の扱いを含めなければ月間収益は出ません。
事業計画では『設備出力×公表単価×全時間』のような計算を避けます。応札可能率、約定率、提供可能なkW、対象時間、停止・点検、通信障害を月ごとに置きます。
利益計算で落としやすい8つの費用
売上から、充電電力、充放電損失、補機電力、電池劣化、アグリゲーター報酬、通信・監視、保守・保険、土地・系統・金融に関する費用を差し引きます。参加する商品によって必要な応動性能や設備構成が変わるため、EPC価格だけで比較できません。
同じ時間にスポット市場や容量市場の価値を重複計上していないかも確認します。需給調整市場へ提供するために残した容量には、他市場で売買できなかった機会損失があります。
- ✓充電電力と変換損失
- ✓補機電力と待機電力
- ✓サイクル・経年による劣化
- ✓アグリゲーター、通信、監視
- ✓アセスメント不適合時の影響
- ✓点検・停止による応札不能
- ✓土地、保険、税、系統費用
- ✓借入金利と返済条件
7月だけで20年の収支を作らない
暑さや需要、再エネ出力、連系線制約、参加者数、制度変更によって、市場の約定量と単価は変わります。1か月の確報は直近の実態確認には有用ですが、長期平均ではありません。
少なくとも月別・商品別・エリア別の複数期間を確認し、単価、約定率、応札可能率を別々に変えた感度分析を行います。価格が下がるケースだけでなく、約定量が減るケース、必要な性能を維持できないケースも必要です。
『儲かるか』へ答えるために必要な資料
事業者から、月別・市場別の売上モデル、応札・約定・指令の前提、30分単位のSOC、劣化シミュレーション、アセスメント、費用一覧、価格・約定率の下振れケースを受け取ります。過去実績を使う場合は、どのエリア、商品、期間のデータかを明記します。
結論は市場全体ではなく、連系地点、設備仕様、契約、運用者、借入条件を含む個別案件ごとに出します。高い月があったことは投資判断の根拠の一つですが、利益を保証する根拠にはなりません。
POINT
この記事のまとめ
2026年7月の確報は需給調整市場の状況を読む一次資料ですが、蓄電池の利益表ではありません。約定単価から個別設備の利益を断定せず、応札可能率、約定率、アセスメント、損失、劣化、運用費、他市場の機会損失、資金調達を含めて案件ごとに評価してください。
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資料がすべて揃っていなくても、現在分かる範囲からご相談いただけます。参考にした一次情報
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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