東急不動産・IBeeT、宮城に20MW/75.2MWh蓄電所|送電端とPCS出力の違い

宮城県白石市で20MW・75.2MWhの系統用蓄電所を新設。送電端20MWとPCS23MWをどう読むか、SPC、補助金、設備構成、事業性評価の確認点を整理します。

IBeeTと東急不動産は2026年8月28日、共同出資で宮城白石蓄電所合同会社を設立し、宮城県白石市に系統用蓄電所を新設すると発表しました。公表値は送電端出力20MW、蓄電容量75.2MWh。2026年度中に着工し、2028年度の運転開始を予定します。パワーエックスの別発表ではPCS出力23MW、蓄電システム30台とされており、同じ案件でも出力の測定位置によって数字が異なります。蓄電所案件を比較するときに『何MWか』だけを見てはいけないことが分かる事例です。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。

OUTPUT & ENERGY同じ案件でも、出力の測定位置で数字が変わる
蓄電容量75.2 MWh

蓄電システム30台の合計

PCS出力23 MW

直流を交流へ変換する設備側

送電端出力20 MW

所内設備を経て系統へ送る地点

単純比3.76 時間

75.2MWh÷20MW。実運用時間ではない

PCS23MWと送電端20MWの差の内訳は非公表です。設備損失や設計余裕など、特定の理由に結び付けることはできません。

01

共同出資SPCを設立、2028年度の運転開始を予定

事業主体は、IBeeTと東急不動産が2026年6月に設立した宮城白石蓄電所合同会社です。IBeeTが代表社員として事業運営を担い、プロジェクトマネジメント、蓄電システム構築、竣工後の運営体制づくりを支援します。2社の出資比率、総事業費、融資条件、EPC事業者、アグリゲーターは公表されていません。

本事業は、経済産業省の令和7年度『再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金』を活用します。同制度は、各種電力市場での取引などを通じて余剰再エネの吸収や調整力の供出が可能な系統用蓄電池の導入を支援するものです。ただし、今回の交付額や補助率は発表資料に記載されていません。

02

送電端20MWとPCS23MWは、測定位置が違う

IBeeTの発表は『送電端出力20MW』、パワーエックスの発表は『PCS出力23MW』としています。送電端は、蓄電所内の変圧器や補機などを経て系統へ送り出す地点の出力です。PCS出力は蓄電池の直流電力を交流へ変換する設備側の値で、同じ意味ではありません。

23MWと20MWの間には3MW、PCS出力23MWに対して約13%の差があります。ただし、この差が変換損失、補機消費、連系上限、設計上の余裕のどれに対応するかは公表されていません。理由を断定せず、単線結線図、機器定格、連系契約、所内負荷を確認する必要があります。

03

75.2MWhを単純に割ると3.76時間、実運用時間とは限らない

蓄電容量75.2MWhを送電端出力20MWで単純に割ると3.76時間、PCS出力23MWで割ると約3.27時間です。この比率は設備構成を理解する目安になりますが、満充電から同じ出力で連続放電できる実時間を保証する数字ではありません。

実際に市場へ出せる電力量は、使用可能SOC範囲、充放電効率、所内消費、温度、経年劣化、メーカー保証、系統からの指令、運用上確保する予備容量で変わります。案件販売資料で『4時間蓄電池』と表記されていても、どの出力・容量を基準にした4時間なのかを確認します。

PROJECT STRUCTURE設備だけでなく、事業全体の責任分界を見る
事業主体共同出資SPC

IBeeT・東急不動産が出資

蓄電設備PowerX

30台・合計75.2MWh

PCSSMA

公表出力23MW

未公表運用・EPC

市場、アグリゲーター、工事会社

補助金採択、機器仕様、運用契約は別の論点です。投資判断では一つの資料にまとめて照合します。

04

蓄電システム30台、パワーエックスとSMAを組み合わせる

採用するのは、パワーエックスと伊藤忠商事が共同展開する『PowerX × Bluestorage』です。パワーエックスの発表では、10フィートコンテナ型のMega Power 2500を30台導入します。PCSには独SMA製を採用します。

発表済みのパッケージは、国内メーカーの蓄電システムとSMA製PCSを組み合わせる構成です。今回の資料では、EMS、変圧器、受変電設備、消防設備、遠隔監視、サイバーセキュリティ、保守体制の詳細は示されていません。異なるメーカーの機器を組み合わせる場合は、通信仕様、制御責任、保証境界、障害時の窓口が重要になります。

05

補助金採択と案件採算は分けて考える

補助金は初期投資を抑える一方、それだけで事業収益を保証するものではありません。JEPX、需給調整市場容量市場などのどこへ、どの容量を、どの期間提供するかで売上は変わります。今回の発表では、参加市場、運用会社、収益保証、想定IRR、借入条件は公表されていません。

2026年9月1日からは、需給調整市場の一次調整力二次調整力①、複合商品のΔkW上限価格が10円/ΔkW・30分へ下がります。2028年度に運転を始める案件では、現在の価格だけでなく、制度変更、市場参加者の増加、充電電力費、インバランス、劣化、固定費を含めた下振れケースが必要です。

06

大型不動産・金融系企業が、SPCで蓄電所を保有する流れ

IBeeTは伊藤忠商事と東京センチュリーの出資で設立され、今回が同社の出資参画する蓄電所事業の4件目としています。東急不動産は別途、国内大手企業と合同会社リブラを組成し、特別高圧6物件、合計約174MW、総事業費約300億円の計画も進めています。宮城白石蓄電所は、その6物件と同一事業としては発表されていません。

系統用蓄電池は、土地と接続権を取得して設備を建てるだけの市場ではなくなっています。SPC組成、資金調達、補助金、機器調達、EPC、運用、保守を束ね、長期保有できる事業者の競争になっています。案件を売買・請負する側も、出力と容量だけでなく、次の条件を揃えて比較する必要があります。

  • 送電端・PCS・連系点のどの出力を示しているか
  • 公称容量・定格容量・使用可能容量の違い
  • SOC範囲、効率、劣化保証を反映した実運用量
  • EPC、EMS、アグリゲーター、O&Mの責任分界
  • 補助金の交付額、財産処分、運用・報告要件
  • 市場価格下振れ時の返済余力と追加出資条件

POINT

この記事のまとめ

宮城白石蓄電所は、送電端20MW、蓄電容量75.2MWhで、2028年度の運転開始を予定します。パワーエックス資料のPCS出力は23MWで、送電端とは定義が異なります。75.2MWh÷20MWの3.76時間も単純比であり、実際の放電可能時間ではありません。案件評価では、出力の測定位置、使用可能容量、効率・劣化、責任分界、補助金条件、市場価格の下振れを確認する必要があります。

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本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。

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