ΔkWは『必要なときに動かせる出力を空けておく能力』、kWhは『実際に売買・調整した電力量』です。需給調整市場では、約定した出力余力を確保する対価と、指令に応じて動いた電力量の精算を分けて考えます。系統用蓄電池の収支表で両者を混ぜると、売上の過大評価やJEPX収益との二重計上につながります。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。
必要時に動かせる能力を確保
約定した30分コマの待機能力
指令や売買で増減した電力量
JEPXと調整電力量は精算根拠が別
同じ蓄電池から生まれる数字でも、能力の予約と実際の電力量を同じ売上として扱うことはできません。
ΔkWは出力の予約、kWhは実際に動いた電力量
EPRXはΔkWを、実需給時点で必要な能力を持つ電源等を、出力調整できる状態であらかじめ確保することと定義しています。単位の基礎となるkWは、ある瞬間にどれだけ出力を出せるかを示します。需給調整市場では、約定した30分コマに、その出力を指令へ使える状態で残します。
kWhは出力を時間で積み上げた電力量です。需給調整市場では、一般送配電事業者の指令に応じて増減した電力量が調整電力量料金の対象になります。OCCTOの用語集では、上げ調整単価V1を、出力増指令によって増加した電力量に乗じて支払う1kWh当たりの単価と整理しています。
1MWを30分確保しても、0.5MWhを必ず売るわけではない
出力1MWを30分間、常に最大出力で放電すると、電力量は1MW×0.5時間=0.5MWh、つまり500kWhです。ただし、これは出力と時間の関係を示す上限側の単純計算です。需給調整市場で1MWのΔkWを約定しても、毎回500kWhを放電する意味ではありません。
実際の調整電力量は、指令の有無、指令値、応動時間、基準値、計測値で決まります。指令がなければ、待機能力を確保していても調整電力量がゼロとなる場合があります。反対に、細かな指令へ繰り返し追従する商品では、30分の途中で出力が変わります。
7.21円で1MW約定なら、ΔkW対価は単純計算7,210円
例として、1MW=1,000kWを7.21円/ΔkW・30分で1コマ約定した場合、ΔkW対価は1,000×7.21=7,210円です。ここで0.5時間をもう一度掛ける必要はありません。単価自体が30分商品に対する表示だからです。
この7,210円は説明用の単純計算で、手取りや約定を保証するものではありません。実際には商品別の約定価格、約定量、売買手数料、アセスメント、契約上の控除などを確認します。指令で動いたkWhの精算も別建てで、ΔkW対価に500kWh分が自動的に含まれるわけではありません。
1,000kWを指令へ使える状態で確保
1,000kW×7.21円。単純計算
1MW×0.5時間=500kWh
毎回500kWh動くわけではない
上限価格・例示単価は約定や手取りを保証しません。指令量、精算単価、手数料、SOC、効率、アセスメントを別に確認します。
JEPXのkWhと、調整指令で動いたkWhも分ける
JEPXのスポット市場は、翌日に受け渡す電気を30分単位の48商品として売買し、価格は円/kWhで示されます。ここでのkWhは、売買契約に基づいて受け渡す電気です。需給調整市場の調整電力量は、一般送配電事業者の指令に応じて基準値などから増減した電力量です。単位は同じでも、取引目的と精算の根拠が違います。
蓄電池がJEPXで安い時間に充電し、高い時間に放電する収益と、需給調整市場の調整電力量料金を同じ欄へ入れると、どの電力量がどの契約で精算されたか追えません。収支表は少なくとも、JEPXの売買電力量、ΔkW約定量、指令による調整電力量を別行にします。
同じ1MWを、同じ30分に二重で自由利用できない
需給調整市場で1MWを約定した時間は、指令に応じられる出力余力とSOCを確保します。同じ1MWを、同じ30分にJEPXへ全量放電する前提で重ねれば、指令時に必要な余力が残らない可能性があります。OCCTOも、現在は別々に取引される電力kWhと調整力ΔkWを適切に配分する必要性を、同時市場の検討理由として示しています。
実際には複合約定や基準値、充電中の需要抑制を含む運用があるため、単純に市場を一つだけ選ぶとは限りません。ただし、設備の同じ出力領域・同じSOCを複数の売上へ無条件に割り当てることはできません。運用者が作る30分単位の市場配分表で、利用可能な出力と容量を照合します。
蓄電池では、充電を減らす動きも上げ調整になり得る
需給調整市場で現在取引されるのは上げ調整力です。蓄電池は放電を増やして系統への供給を増やすほか、充電中なら充電電力を減らし、系統から取る電力を抑えることで上げ方向へ応動できます。ただし、どの動きをΔkW・kWhとして評価するかは、リソース区分、基準値、計測点、事前審査で決まります。
カタログ上のPCS出力と、市場で応札できるΔkWは同じとは限りません。連系点の上限、補機電力、SOC上下限、効率、温度制約、劣化、通信遅延を差し引き、評価地点で確実に出せる量を置きます。
収支表では、売上3本と費用・制約を別々に置く
案件評価では、①JEPXの電力量売買、②需給調整市場のΔkW、③指令で動いた調整電力量の3本を分けます。さらに、充電電力費、充放電効率、電池劣化、補機電力、通信・監視、アグリゲーター手数料、売買手数料、停止時間、アセスメント不適合時の扱いを対応させます。
確認資料は、EPRXの取引規程・取引ガイド、商品要件、料金算定諸元、属地TSOの事前審査資料、アグリゲーター契約です。制度値や上限価格は改定されるため、収支モデルには参照資料名と更新日を残し、変更時に再計算できる形にします。
- ✓ΔkW約定量・単価・約定率
- ✓調整電力量とV1・V2単価
- ✓JEPXの充電・放電量と価格
- ✓30分ごとの出力配分とSOC
- ✓基準値・計測点・精算点
- ✓充放電効率・劣化・補機電力
- ✓通信・監視・手数料・アセスメント
- ✓制度資料の版数と更新日
POINT
この記事のまとめ
ΔkWは約定した時間に動かせる出力能力、kWhは実際に売買・調整した電力量です。1MWを30分、最大出力で動かせば0.5MWhですが、1MWのΔkW約定が毎回500kWhの放電を意味するわけではありません。蓄電池の事業計画では、JEPX、ΔkW、調整電力量を別々に計上し、同じ出力・SOC・時間を重ねていないか確認してください。
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- ✓蓄電池容量とPCS出力の整理
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参考にした一次情報
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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