電力需給調整力取引所(EPRX)は2026年8月28日19時、三次調整力②の9月分「募集量削減係数」を公表しました。8月分と比べると、九州の0時から3時は0.095~0.286から全6コマで1.000へ上昇する一方、北陸の同時間帯は0.857から全6コマで0.000へ低下しています。北海道の19時から21時も0.013~0.031から0.270~0.474へ変わりました。この係数は算定された必要量へ掛けて、需給調整市場システムへ登録する募集量を決める値です。単価や約定率ではありませんが、三次②を狙う蓄電池の応札機会に直結するため、月替わり前にエリア・30分コマ別で収益前提を更新する必要があります。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。
8月0.095~0.286 → 9月は全6コマ
8月は0.013~0.031
8月は0.349~0.622
8月0.857 → 9月は全6コマ
数値は募集量の算定に使う係数です。市場価格、約定率、収益率を表すものではありません。
9月は、同じ三次②でもエリアと時間帯で方向が分かれた
9月の募集量削減係数は、九州の0時~3時が6コマすべて1.000です。8月は同じ時間帯が0.095~0.286でした。中国も0時~3時が0.706~0.947となり、8月の0.349~0.622から上昇しています。北海道の19時~21時は0.270、0.389、0.468、0.474で、8月の0.013、0.030、0.031、0.028を上回りました。
一方、北陸の0時~3時は、8月の6コマがすべて0.857だったのに対し、9月はすべて0.000です。北陸は15時30分~19時も9月は8コマすべて0.000で、8月は0.078~0.214でした。全国一律に募集機会が増減したのではなく、接続エリアと時間帯で方向が大きく異なります。
募集量削減係数は、単価でも約定率でもない
EPRXは、募集量削減係数を『直近約1か月の低価格帯の応札量÷削減前の募集量』で算定しています。低価格帯の基準には、過去一定期間の各エリアの余力平均単価を使い、0.39円/ΔkW・30分を下限とします。9月分は7月21日~8月20日の取引実績と、3月~5月の余力平均単価が基礎です。
需給調整市場システムには、各30分ブロックの再エネ予測と必要量テーブルから算定した調整力必要量へ、この係数を掛けた量が登録されます。1.000は削減前の必要量を係数で減らさない設定、0.000は係数を掛けた募集量がゼロになる設定です。ただし、必要量そのものは再エネ予測などで変わるため、係数1.000が一定量の募集や約定を保証するわけではありません。
8月から9月へ、実務で見落としたくない四つの変化
変化幅が大きいのは、九州の深夜、北海道の夕方、中国の深夜、北陸の深夜・夕方です。前月の係数をそのまま9月のシミュレーションへ使うと、エリアによっては応札機会を過大または過小に見積もります。
たとえば九州の0時~3時を8月の最小係数0.095で固定していたモデルは、9月の1.000を反映できません。反対に、北陸の0時~3時を0.857で置き続ければ、9月は募集機会を過大に見ます。収益モデルは月平均の係数一つではなく、少なくとも48コマ×接続エリアで持つ必要があります。
- ✓九州 0:00~3:00:0.095~0.286 → 全コマ1.000
- ✓北海道 19:00~21:00:0.013~0.031 → 0.270~0.474
- ✓中国 0:00~3:00:0.349~0.622 → 0.706~0.947
- ✓北陸 0:00~3:00:全コマ0.857 → 全コマ0.000
再エネ予測と必要量テーブルを使用
48コマ・9エリアの係数を反映
実際の必要量、競合、応札価格で決定
充電、損失、劣化、運用、アセスメント
1.000は100%約定を意味しません。入札時は市場システムに登録された最新の調整力必要量を確認します。
蓄電池の収益モデルは、募集量・応札・約定を分ける
係数が上がっても、蓄電池の売上が同じ割合で増えるとは限りません。実際のΔkW収入は、システムに登録された募集量、競合する応札量・応札価格、自設備の入札量、約定処理、アセスメントを通じて決まります。さらに調整指令を受けて動いたkWhの精算、SOC維持の充電費、効率、劣化、運用手数料を別に計算します。
案件採算では、①必要量テーブルと係数から想定募集量を置く、②実績から価格帯別の約定率を置く、③設備の出力・SOC制約を反映する、④市場売上から充電・劣化・運用費を差し引く、という順で組みます。係数と約定率を同じ数字として扱ったり、1.000を100%約定と読んだりしないことが重要です。
9月1日前に確認する資料と設定
アグリゲーターや自社運用部門は、9月分の係数を48コマ・9エリアで取り込み、前月値が残っていないかを確認します。ただしEPRXも、入札時には需給調整市場システムへ登録された調整力必要量を必ず確認するよう求めています。公表PDFは計画値の更新に使い、実際の応札判断は市場システムの最新値で行います。
設備保有者が運用を委託している場合は、運用者が係数更新をいつ収益予測へ反映するか、月次報告で募集量・応札量・約定量を分けて開示するかを確認します。契約に最低収入や成果連動報酬がある場合も、募集量の制度変更を誰がどの時点で反映するかを明確にします。
- ✓9月分48コマ×接続エリアの係数
- ✓市場システムに登録された当日の調整力必要量
- ✓自設備の応札量・価格・約定量
- ✓SOC上下限、充電費、効率、劣化、運用費
- ✓運用委託契約の制度変更・報告・報酬条項
係数の変化だけで、需給や競争環境の原因は断定できない
係数は直近約1か月の低価格帯応札量と削減前募集量などから算定された結果です。公表表だけでは、個別事業者の参入・退出、設備停止、応札戦略、収益性の変化を特定できません。係数が0.000の時間帯を『三次②が不要』、1.000を『不足している』と断定することもできません。
事業判断で使えるのは、9月の募集量計算へ反映することと、実際の必要量・応札・約定・使用率を継続して追うことです。EPRXは2026年8月分の三次②必要量・使用率等を9月末を目途に公表するとしています。9月の係数と実績がどう対応したかは、次回の月次データで検証します。
POINT
この記事のまとめ
三次調整力②の9月募集量削減係数は、九州0時~3時が全コマ1.000へ上がる一方、北陸の同時間帯は全コマ0.000へ下がりました。係数は募集量の計算に使う値で、単価や約定率ではありません。蓄電池の収益モデルは48コマ×接続エリアで更新し、実際の応札前には市場システムの調整力必要量を確認してください。
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本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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