系統用蓄電池はどう稼ぐ?JEPX・需給調整市場・容量市場を整理

系統用蓄電池の収益構造を、JEPXの価格差取引、需給調整市場のΔkW・kWh、容量市場のkW価値、SOC配分、劣化・手数料・アセスメントから解説します。

系統用蓄電池は、安い時間に充電して高い時間に売るだけの設備ではありません。JEPXでは電力量の価格差、需給調整市場では動かせる能力と実際の調整電力量、容量市場では将来の供給力に価値が付きます。ただし、同じ出力・電池残量・30分コマを三つの市場へ無条件に重ねることはできません。利益を決めるのは売上の足し算ではなく、限られた1MW・1MWhをどこへ配分し、費用と劣化を引いた後に何が残るかです。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。

THREE REVENUE MARKETS系統用蓄電池が提供する三つの価値2026年8月28日時点
JEPX電力量 kWh

安い時間に充電し、高い時間に放電

需給調整市場ΔkW+kWh

待機能力と指令で動いた電力量

容量市場供給力 kW

将来の実需給年度に出せる能力

設備側の制約出力+SOC

同じ時間・同じ余力を無条件に重ねない

三市場は売る価値が違います。運用では一つのPCS・電池容量・連系点を、30分ごとに配分します。

6 SHEETS / EXCEL系統用蓄電池の事業・見積条件を、同じ表で整理できます。

連系、設備、運用、補助金申請前の確認、3者見積、必要資料をまとめた実務シートです。

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01

収益源は三つあるが、蓄電池は一つしかない

系統用蓄電池の主な価値は、JEPXで売買する電力量kWh、需給調整市場へ提供する調整力ΔkWと調整電力量kWh、容量市場へ提供する供給力kWに分けられます。市場ごとに買い手、取引時期、価格単位、設備へ求める状態が違います。

一方、設備側にあるのはPCSの出力、使用可能な電池容量、連系点の上限、SOCだけです。ある30分でJEPXへ全出力を放電すれば、その出力を同時に調整力の余力として残せない場合があります。最初に市場別の売上を作るのではなく、30分ごとに出力とSOCを割り当てます。

02

JEPXは、売値と買値の差から損失・費用を引く

JEPXのスポット市場は、翌日に受け渡す電気を30分単位の48商品として売買します。蓄電池は価格が低い時間に充電し、高い時間に放電することで価格差を狙えます。ただし、放電価格から充電価格を単純に引くだけでは利益になりません。

例として、充電側で1MWhを10円/kWhで購入し、往復効率を説明用に85%と置くと、放電できる電力量は0.85MWhです。30円/kWhで売れば売上25,500円、充電電力費10,000円との差は15,500円です。ここから取引手数料、託送・インバランスに関する費用、補機電力、劣化、運用費などを引きます。85%は製品性能の保証ではなく、計算方法を示す仮定です。

03

需給調整市場は、待機能力と実際の動きを分ける

需給調整市場では、一般送配電事業者が必要なときに出力を動かせる能力をΔkWとして調達します。約定した時間は、商品ごとの応動・継続・指令追従要件を満たせる出力余力とSOCを残します。指令に応じて実際に増減した電力量は、調整電力量料金として別に精算されます。

収支は、ΔkW単価×約定量だけで作りません。応札可能率、約定率、指令量、調整電力量単価、充電費、効率、通信・監視、アグリゲーター手数料、アセスメント不適合時の負担を商品別に置きます。上限価格は約定単価でも収益保証でもありません。

NET REVENUE CHECK見るべきは市場売上の合計ではなく、手取り
01 / 売上市場別に分ける

JEPX、ΔkW、調整kWh、容量市場

02 / 時間30分ごとに配分

同じ出力とSOCの二重計上を排除

03 / 変動費充電・損失・劣化

効率、補機、スループット、交換

04 / 契約費手数料・未達負担

運用、通信、アセスメント、ペナルティ

ベースケースだけでなく、価格・約定率・劣化・制度変更のストレスケースでDSCRとIRRを確認します。

04

容量市場は、4年後に供給力を出せる状態へ対価を払う

容量市場のメインオークションは、原則として実需給年度の4年前に供給力を調達し、必要に応じて1年前に追加オークションで調整します。容量確保契約金額は、契約単価(円/kW)×契約容量(kW)を基準に、経過措置や経済的ペナルティを反映して算定され、原則として月ごとに支払われます。

これは放電したkWhの売上ではありません。対象年度に契約した供給力を提供する責任が伴い、停止計画の調整、供給力提供、実効性テストなど、電源等の区分に応じたリクワイアメントがあります。蓄電池がどの区分・容量で参加できるかは、対象年度の募集要綱、期待容量、連系・計量条件で確認します。

05

容量市場へ参加しても、JEPXと需給調整市場は使える

容量市場は供給力を確保する制度であり、契約した蓄電池が年間を通じて他市場へ一切参加できなくなる仕組みではありません。OCCTOの実需給期間中マニュアルも、各市場への入札量を容量提供事業者が電源ごとに配分する考え方を示しています。

ただし、容量市場の供給力提供が求められる時間に、JEPXや需給調整市場の約定を理由として必要な出力を出せなければ、契約上の問題になり得ます。優先順位、SOCの下限、供給力提供通知を受けたときの運用変更、未達時の負担を、容量提供事業者とアグリゲーターの契約に落とします。

06

三市場の売上を、そのまま横に足してはいけない

よくある誤りは、JEPXで毎日フルサイクルする売上、需給調整市場へ全出力を出す売上、容量市場で全kWを契約する売上を、それぞれ最大値で計算して合計することです。同じ設備の同じ時間を複数回使う前提になり、SOC、連系点出力、商品要件、契約義務が反映されません。

実務では、30分ごとに①JEPX充電、②JEPX放電、③調整力の上げ余力、④調整指令に備えるSOC、⑤容量市場の供給力制約を並べます。OCCTOは、現在別々に取引される電力kWhと調整力ΔkWを適切に配分する仕組みとして同時市場を検討しており、市場間の電源配分が制度上も重要な論点になっています。

07

案件価格ではなく、手取りキャッシュフローを比較する

事業収支は、JEPXの売電収入、ΔkW対価、調整電力量料金、容量確保契約金額を別々に置きます。そこから、充電電力費、効率損失、電池・PCSの劣化と交換、補機電力、保険、土地、保守、通信、取引・アグリゲーター費用、固定資産税、借入返済を差し引きます。

特に確認したいのは、収益シミュレーションの市場価格が実績か予測か、約定率をどう置いたか、電池交換費を何年目に入れたか、同一時間の二重計上がないかです。ベース、価格低下、約定率低下、劣化進行、制度変更を分けた複数シナリオでDSCRとIRRを確認します。

08

設備発注前に、運用者と同じ前提表を持つ

土地と連系権を取得してから運用方法を考えると、PCS・EMS・通信・計量が狙う商品に合わない場合があります。設備発注前に、どの市場へ誰が入札し、誰がSOCを決め、誰が基準値・計画・実績を提出し、未達費用を誰が負担するかを固定します。

確認資料は、JEPXの30分価格データ、EPRXの取引実績・取引規程・取引ガイド、OCCTOの容量市場募集要綱・約款・業務マニュアル、接続検討回答、アグリゲーター契約、蓄電池保証条件です。収益モデルの更新日と参照資料の版数も残します。

  • 連系点の出力上限と受電・逆潮流条件
  • PCS出力と使用可能な蓄電容量
  • SOC上下限・効率・年間スループット
  • JEPX価格データと充放電ルール
  • 需給調整市場の商品・約定率・指令量
  • 容量市場の電源区分・契約容量・リクワイアメント
  • 入札・計画提出・SOC運用の担当者
  • 劣化保証、交換費、停止期間
  • 手数料、ペナルティ、制度変更時の契約
  • 市場別売上の同一時間重複チェック

POINT

この記事のまとめ

系統用蓄電池は、JEPXのkWh価格差、需給調整市場のΔkW・調整電力量、容量市場のkW価値を組み合わせて収益化します。ただし、同じ出力・SOC・30分コマを三市場へ最大値で重ねることはできません。投資判断では市場別売上を30分単位の運用表へ落とし、充電費、効率、劣化、通信・運用費、手数料、リクワイアメント、ペナルティを引いた後の手取りで比較してください。

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