Scope 1・2・3の説明を読んでも、自社の電気料金明細や燃料購入記録をどこに当てはめればよいか分からない——。工場や倉庫で最初につまずきやすいのは、用語そのものより、社内のデータが部署や拠点に分かれていることです。まず電気と燃料を整理し、その後に購買、物流、廃棄物などへ範囲を広げると進めやすくなります。本記事は2026年8月24日時点の環境省資料とGHGプロトコルを確認して作成しています。
Scope 1・2・3 必要データ収集シート(Excel)と使い方ガイド(PDF)を無料でダウンロードできます。
資料の内容を見る →まず押さえたい違いは「誰が、どこで排出したか」
環境省は、サプライチェーン排出量をScope 1、Scope 2、Scope 3の合計として整理しています。工場・倉庫に置き換えると、構内で燃料を燃やす活動がScope 1、購入した電気・熱・蒸気の使用に伴う排出がScope 2、それ以外の事業に関係する間接排出がScope 3です。
同じエネルギーに関係するデータでも区分は異なります。ボイラーで使う都市ガスや重油はScope 1、電力会社から購入した電気はScope 2です。購入した燃料や電気の採掘・精製・輸送など、Scope 1・2に含まれない上流工程はScope 3のカテゴリ3に入ります。数字を集める前に、この区分を社内でそろえておくと二重計上や抜けを防ぎやすくなります。
Scope 1は、燃料と冷媒の記録から確認する
Scope 1は自社からの直接排出です。工場のボイラー、炉、非常用発電機、社有車などで化石燃料を燃やす活動が代表例です。環境省はフロンガスの漏えいもScope 1の例に挙げています。
最初に集めたいのは、燃料の種類、使用量、単位、使用した拠点、対象期間です。都市ガスの請求書、LPG・重油の納品書、社有車の給油記録を同じ期間で揃えます。冷媒は、機器台帳だけでは漏えい量を確定できません。空調・冷凍冷蔵設備の点検記録や、充塡・回収に関する記録がどこに保管されているかも確認します。
Scope 2は、拠点別・月別の購入電力を揃える
Scope 2は、他社から供給された電気、熱、蒸気などを使うことで生じる間接排出です。GHGプロトコルのScope 2ガイダンスでは、購入・取得した電気、蒸気、熱、冷熱が対象として示されています。工場や倉庫で電力会社から買っている電気は、ここに入ります。
実務では、直近12か月分を一つの表にまとめるところから始めます。拠点名、請求月、使用電力量(kWh)、電力会社、小売メニュー、契約番号を残してください。請求期間が暦月とずれる場合は、期間も記録します。30分値は太陽光や蓄電池の検討に役立ちますが、まず年間の排出量を整理する段階では、月別明細を揃えることが先です。
Scope 2にはロケーション基準とマーケット基準があり、契約や電力の環境価値の扱いも関係します。自家消費太陽光やPPAを検討するときは、発電量だけでなく、どの算定方法・報告目的で扱うのかを確認する必要があります。設備を入れれば一律に同じ数字だけ減る、と決めつけることはできません。
Scope 3は15カテゴリ。最初から全部を精緻にしない
Scope 3は、Scope 2以外の間接排出で、自社の活動に関連する他社の排出です。GHGプロトコルと環境省の整理では15カテゴリに分かれ、購入した製品・サービス、資本財、物流、廃棄物、出張、通勤、販売した製品の使用・廃棄などが含まれます。
初年度から15カテゴリすべてを同じ細かさで集めようとすると、担当部署が動けなくなりがちです。まず購買台帳、固定資産台帳、物流費、廃棄物処理記録、出張費、通勤方法など、すでに社内にあるデータの所在を確認します。そのうえで、自社に該当するカテゴリと、影響が大きそうなカテゴリを切り分けます。
GHGプロトコルは、Scope 3の企業間比較を目的としていないと説明しています。会社ごとに組織構造や算定方法が異なるためです。競合他社の合計値に合わせるより、まず自社の算定範囲とデータの根拠を明記し、同じ方法で継続できる形をつくることが重要です。
最初の社内依頼は、この5つに絞る
算定担当者だけで数字を集めるのは難しいため、拠点管理、経理、購買、物流、人事に分けて依頼します。依頼文には対象期間、単位、拠点名、元資料の保存場所を明記し、集計値だけでなく根拠まで戻れるようにします。
- ✓拠点一覧と、所有・賃借などの使用関係
- ✓拠点別・月別の電気、熱、蒸気の使用量と請求書
- ✓燃料別の使用量、単位、使用設備、納品書・給油記録
- ✓空調・冷凍冷蔵設備の台帳と冷媒の点検・充塡・回収記録
- ✓購買、固定資産、物流、廃棄物、出張・通勤データの所在
設備投資は、算定の後に優先順位を付ける
排出量を区分する目的は、表を完成させることではありません。どの拠点の、どのエネルギー使用が大きいかを確かめ、対策の順番を決めるためです。購入電力が大きければ、自家消費太陽光、PPA、空調更新などが比較候補になります。燃料使用が大きければ、まず対象設備と稼働条件を確認します。
蓄電池は電気をつくる設備ではないため、導入だけで排出削減になるとは限りません。充電する電気、放電する時間、太陽光との連携、ピーク対策などを分けて考えます。また、空調を更新する場合も、更新前後の電力使用量を同じ範囲で追えるよう、先に基準となるデータを残しておくことが大切です。
設備の相談に進む段階では、12か月分の電気料金明細、可能なら30分値、燃料使用量、設備台帳があると話が早くなります。まだ揃っていなければ、ある資料と不足している資料を分けるだけでも、次の作業が見えます。
POINT
この記事のまとめ
最初にやることは、15カテゴリを一気に計算することではありません。対象拠点と期間を決め、購入電力、燃料、冷媒の記録を集めます。次に購買・物流・廃棄物などScope 3に使う社内データの所在を確認します。根拠資料まで戻れる状態をつくってから、太陽光、PPA、空調、蓄電池などの対策を比べてください。
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電気料金明細、設備台帳、運転状況を確認し、空調・キュービクル・太陽光などの更新方針を整理します。現地調査や設計・施工まで対応します。
資料がすべて揃っていなくても、現在分かる範囲からご相談いただけます。参考にした一次情報
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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