UPDATERは2026年8月28日、TISIの電力小売向け基幹システム『エネLink』シリーズに、電力トラッキングシステムを提供すると発表しました。発電量と使用量を30分単位で管理し、1時間単位で一致を確認する『アワリーマッチング』への対応機能を、2026年12月までに実装する予定です。企業の再エネ調達を年単位の総量だけでなく、使った時間と発電した時間まで照合するための国内基盤が、小売システムへ組み込まれ始めました。ただし、GHGプロトコルの新しいScope 2要件はまだ確定しておらず、現行ガイダンスが引き続き有効です。本記事は2026年8月28日時点の公表情報を基にしています。
使用量と再エネ調達量の年間総量を確認
発電と使用の時刻をそろえて一致量を確認
発電所ID、電源種、所在地、30分値
需要地点、30分値、契約上の割当て
アワリーマッチングはデータと契約上の割当てを照合する仕組みで、特定の電子の物理的な移動を証明するものではありません。
30分値を使い、1時間単位の発電・使用量を照合
今回の取り組みでは、UPDATERのマッチングロジックとブロックチェーン技術をTISIの『エネLink』シリーズで活用します。実装予定は2026年12月までです。UPDATERによると、同社のシステムは600カ所以上の再エネ発電所と4,000カ所以上の需要施設で運用されています。いずれも同社公表値であり、今回TISIへ接続する発電所・需要施設の数を示すものではありません。
UPDATERは2027年度までに外販先20社を目指すとしています。一方、時間単位の発電情報を証明する仕組みを扱うEnergyTagの認定は、2026年8月時点で申請中です。認定をすでに取得したサービスとして扱わないよう注意が必要です。
アワリーマッチングは『同じ1時間に発電したか』を見る
従来の再エネ調達では、年間に使用した電力量と、年間に調達した再エネ電力・環境価値の総量を合わせる考え方が広く使われています。アワリーマッチングは粒度を細かくし、需要家が電気を使った時間帯に、対応する再エネ発電量があったかを1時間単位で照合します。
これは特定の発電所で生まれた電子が、そのまま特定の工場へ届いたことを証明する仕組みではありません。発電・使用・契約上の割当てを時刻情報付きで管理し、同じ環境価値を二重に配分しないためのデータ基盤です。発電地点と需要地点の地域的な関係も、制度・基準で定める範囲に沿って確認する必要があります。
GHGプロトコルの時間単位要件は、まだ改定案
GHGプロトコルは2025年10月、Scope 2のマーケット基準に時間単位のマッチングと電力の到達可能性を加える改定案を公開しました。負荷プロファイルによる推計、対象企業の免除基準、既存契約への経過措置、段階的な導入も案に含まれています。公開協議は2026年1月31日に終了しましたが、最終要件ではありません。
GHGプロトコルは2026年8月時点でも、別途通知するまでは既存の基準・ガイダンスが有効だと明記しています。最終的な対象範囲、地域区分、例外、移行期間、発効時期は今後の決定事項です。したがって、現時点で『すべての企業が直ちに1時間単位へ移行しなければScope 2を算定できない』とは言えません。
発電・使用量を30分値で取得
発電地点と需要地点の地域関係
割当て、取消し、二重計上の防止
欠測、推計、訂正、保存方法
GHGプロトコルの最終要件は未確定です。まずは現在の契約で、これらのデータを取り出せるか確認します。
太陽光だけでは、夕方・夜間の一致が残る
年間使用量と年間太陽光発電量が同じでも、時間単位では一致しないことがあります。工場が夕方や夜間も操業する一方、太陽光は夜に発電しないためです。オンサイトPPAでもオフサイトPPAでも、契約電力量だけでなく、発電の時間帯と施設の負荷曲線を重ねる必要があります。
蓄電池は昼の余剰電力を別の時間へ移す手段になりますが、設置すれば自動的に24時間一致するわけではありません。蓄電容量、出力、充放電効率、劣化、非常時利用、JEPXやデマンド対策との運用競合を踏まえます。風力、水力、他の調達電源を組み合わせる場合も、時間別データと環境価値の割当てを確認します。
PPA・電力契約では、データを受け取れるか確認する
将来の基準変更に備えるなら、今すぐ調達方式を変更するより、契約とデータの棚卸しが先です。電力小売、PPA、非化石証書などを別々に管理している場合は、発電所ID、発電地点、電源種、30分値、需要地点、使用量、環境価値の割当てと取消しを結び付けられるか確認します。
新しいPPAや電力小売契約の提案依頼では、時間別データの提供形式、欠測時の補完、同一電源を複数需要家へ配分するルール、第三者検証に使える記録、契約終了後のデータ保存を比較項目に加えます。新基準が確定してからシステムを直すのではなく、データを取り出せる契約にしておくことが実務上の保険になります。
- ✓発電・使用電力を30分または1時間単位で取得できるか
- ✓発電所ID、電源種、所在地を需要地点と結び付けられるか
- ✓証書・環境価値の割当てと取消しを追跡できるか
- ✓欠測・推計・データ訂正のルールがあるか
- ✓既存契約の経過措置と更新時期を確認できるか
- ✓監査・開示に使うデータを保存・出力できるか
次に追うべきは、最終要件と実装コスト
今回の発表は、アワリーマッチング対応が実証の話から、電力小売の基幹システムへ組み込む段階に移った事例です。ただし、導入費、利用料金、照合できない時間の扱い、TISI利用者への提供条件は公表されていません。20社という数値も目標であり、導入実績ではありません。
今後はGHGプロトコルの次回協議と最終文書、EnergyTag認定の結果、国内の非化石価値・計量制度との整合、電力小売各社の料金・データ提供条件を確認します。需要家側では、年間再エネ比率だけでなく、時間別一致率をどの用途で開示し、追加コストを誰が負担するかまで決めて初めて調達判断につながります。
POINT
この記事のまとめ
UPDATERとTISIは、30分値を使って発電・使用量を管理し、1時間単位の一致を確認する機能を2026年12月までに実装する予定です。国内の電力小売基盤が時間別の再エネ管理へ動き始めた一方、GHGプロトコルの時間単位要件はまだ改定案で、現行Scope 2ガイダンスが有効です。需要家は導入を急ぐより、30分値、発電所情報、環境価値の割当て、欠測処理を契約先から取得できるか確認する段階です。
自家消費・PPAの計画について相談する
30分値の使用電力、施設条件、再エネ調達の目的を確認し、自家消費太陽光・PPA・蓄電池をどの順で検討するか整理します。
- ✓30分値から昼夜の電力需要を確認
- ✓自家消費とPPAの比較条件を整理
- ✓蓄電池を組み合わせる目的を明確化
参考にした一次情報
- 株式会社UPDATER「UPDATER、アワリーマッチング対応の電力トラッキングシステムをTISIに提供」↗
- Greenhouse Gas Protocol「GHG Protocol Opens Public Consultations on Scope 2 and Electricity Sector Consequential Accounting」↗
- Greenhouse Gas Protocol「GHG Protocol Corporate Suite of Standards and Guidance Update Process」↗
- Greenhouse Gas Protocol「Scope 2 Guidance」↗
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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