変圧器の無負荷損は、二次側でほとんど電気を使っていなくても、変圧器を通電している間に生じる損失です。負荷損は、負荷電流が流れることで巻線などに生じ、簡易計算では負荷率の二乗に応じて増減します。更新時はカタログの効率だけでなく、実際の負荷率、24時間通電か、休日停止できるかを合わせて比較します。

無負荷損は鉄心、負荷損は主に巻線で生じる
無負荷損の中心は、鉄心を磁化するときのヒステリシス損と渦電流損です。負荷電流にほぼ関係なく、一次側へ電圧を加えている間に発生するため、夜間や休日も受電設備を通電したままなら積み上がります。
負荷損の中心は巻線の抵抗損で、電流が大きいほど増えます。経済産業省のトップランナー検討資料では、全損失を『無負荷損+基準負荷率の二乗×定格負荷損』で扱っています。実機では温度、波形、高調波なども影響するため、簡易式だけで保証値を作らないことが重要です。
| 項目 | 無負荷損 | 負荷損 |
|---|---|---|
| 主な発生部位 | 鉄心 | 巻線 |
| 代表的な呼び方 | 鉄損 | 銅損・抵抗損 |
| 負荷との関係 | 負荷がなくても発生 | 負荷電流で増減 |
| 確認する運用 | 年間通電時間 | 時間帯別・季節別の負荷率 |
| 更新比較 | 無負荷損W | 定格負荷損Wと実負荷率 |
負荷損は負荷率の二乗で概算する
定格負荷損が4,000Wの変圧器を例にすると、負荷率50%の簡易計算は4,000×0.5²=1,000W、負荷率25%なら4,000×0.25²=250Wです。負荷率が半分になると負荷損は4分の1になります。これは仕組みを理解するための例で、特定製品の性能値ではありません。
全損失を比べるときは、この負荷損へ無負荷損を加えます。低負荷の時間が長い設備では無負荷損の比重が上がり、高負荷運転が多い設備では負荷損の差が効きやすくなります。平均負荷率だけではピークと停止時間が消えるため、可能なら30分値や時間帯別データを使います。
カタログ値は同じ負荷条件で比べる
トップランナー変圧器のエネルギー消費効率は全損失Wで示されます。基準負荷率は500kVA以下が40%、500kVAを超えるものが50%です。これは製品区分の評価条件であり、自社工場が常に40%または50%で運転するという意味ではありません。
候補機種を比較するときは、容量、相数、周波数、一次・二次電圧、油入・モールド、標準・準標準仕様をそろえ、無負荷損、負荷損、計算負荷率を並べます。『効率99%台』だけでは小数点以下の差が見えにくいため、損失Wと年間kWhで比較します。
年間損失は通電時間と負荷の変化を反映する
年間電力量へ換算するには、無負荷損へ年間通電時間を掛け、負荷損は負荷率ごとの時間帯に分けて積算します。平日昼、平日夜、休日など少なくとも複数の運転帯に分けると、単一の平均値より実態に近づきます。
太陽光を導入すると昼間の受電側負荷は下がることがありますが、変圧器の接続位置や逆潮流の有無で電流の流れは変わります。太陽光容量だけから変圧器損失を差し引かず、単線結線図と計測点を確認します。
- ✓変圧器ごとの30分値・負荷電流と年間通電時間
- ✓休日・夜間に停止できる系統と常時通電が必要な系統
- ✓将来の設備増設、太陽光・蓄電池、EV充電の計画
- ✓不平衡、高調波、周囲温度、換気など定格低減の条件
- ✓既設盤への収まり、搬出入、停電工程、仮設電源
更新見積では損失表と計算根拠を受け取る
見積書には、候補型式、無負荷損、負荷損、計算負荷率、年間通電時間、想定年間損失電力量を記載してもらいます。複数台をまとめるか分けるか、夜間停止できるかも比較条件です。容量を大きくすれば安心とは限らず、低負荷運転が長くなれば無負荷損の影響が残ります。
省エネ効果は、既設機器の実測値や銘板・試験成績書が不足すると精度が落ちます。推定値は推定と明記し、電気料金の削減額だけでなく、停電・搬入・盤改造・処分を含む総額と保安上の更新必要性を分けて判断します。
POINT
この記事のまとめ
変圧器は、通電しているだけで生じる無負荷損と、負荷率の二乗で増減する負荷損を分けて評価します。カタログの基準負荷率を自社の運転条件と取り違えず、30分値、年間通電時間、将来負荷を使って年間損失を比較します。
参考にした一次情報
本記事は各社・公的機関が公表した情報をもとに、一般的な検討ポイントを独自に整理・解説したものです。掲載組織との提携・推奨関係を示すものではなく、個別案件の設計・法令判断を代替しません。設備条件や最新制度は案件ごとにご確認ください。
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